ドラゴンクエスト3
ドラゴンクエスト3小説ー海の男の話
(2/5)
著作者:異界探訪
Kira’sQuest徹底攻略広場
ドラゴンクエスト3
おう、俺達が七つの海を股にかける大海賊よ。なんだお前さん、船乗りになりてえのか? 海って奴は恐ろしいとこだぜ。なめてかかっちゃぁいけねえ。おっと、そんな事よりお前さんみてえな真っ当な船乗りが、俺達みてえなのを目標にしちゃあいけねえぜ。え、何だって? 何事も勉強だぁ? へっ、まあそこまで言うんなら、そうさなぁ。じゃあ俺がまだお頭に出会ったばかりの頃の話をしてやろう。おいそこ、うるせえぞ! 鉄の槍が500くれえでがたがた騒ぐんじゃねえ! 俺達海の男はもっとでっかく構えねえか! っと、いや悪かったな。もうちぃっと静かなとこへ場所を移そうか。
ん? お頭か? お頭はな、今日はちぃっとばかし用があってな。ま、あんまりお頭の前じゃ話せねえ様な事もあるからな、丁度いいやな。そう、あれは今から20年ばかり前の事になるか。まだ先代のお頭が生きてた頃だ。とは言っても、もうそん時にゃ今のお頭が仕切ってたけどな。いやぁ、今からじゃ想像もつかねえくれえ可愛かったぜ。おっと、こんな事言ってたの、お頭には内緒だぜ。この間も一週間メシ抜きにされちまったからなぁ。いやいや、そんな話じゃ無かったな。済まねえ、つい脱線しちまうのが俺の悪い癖でな。
ところでお前さん、今幾つだい。へえ、あの時の俺と同じ歳か。俺もあの頃は結構無茶したもんだ。そう、それで話を戻すがな。俺が初めてお頭に会ったのが、あの魔の海域と恐れられるグリンラッド海域のすぐ近くよ。俺はお前さんと同じように、ただの船乗りだった。ところが乗ってた船が嵐に遭っちまってな。海をなめてた俺は、真っ先に船から放り出されちまったのよ。海水は冷てえし、辺りにぁ魔物共がうろうろしてやがるし。俺はもう駄目だって思ったね。
そんな俺を拾ってくれたのが、もう判るだろうがお頭って訳よ。地獄に仏ってなぁ、正にこの事さ。俺は幾ら感謝しても足りねえくれえ、お頭に感謝した。ところがだ、お頭は笑ってこう言った。感謝なら、無事にこの海域を抜けてからにしてくれってな。俺は一瞬その言葉の意味が解らなかった。だが、それも船が大きく揺れるまでの事だ。マストは折れんばかりに傾ぎ、俺は再び海に放り出される恐怖を感じたのさ。
いや、今度は嵐じゃ無かったんだ。お前さん、海の悪魔って聞いた事があるか? テンタクルス、それが奴の名だ。屈強な海の男でさえ、奴と出会っちまったら覚悟を決めるって言われてる、正に海の悪魔よ。青と緑の巨体、そのくせやたらと素早く振り回して来る大きな触手。並の船なら、一撃で真っ二つよ。勿論お頭の船は、そんなやわじゃねえ。お頭にかかりゃあテンタクルスの1匹や2匹、簡単に晩のおかずになっちまわぁ。
だがな、そいつは違ったんだ。お頭は言った、海の悪魔だって。テンタクルスの異名ですね、そう俺は尋ねたんだが、お頭は首を振ってもう一度言った。奴こそが本当の海の悪魔だってな。他の奴はせいぜい怪物止まりだ。テンタクルスの大きさって知ってるか? 体長20メートル、大王イカの倍で、普通は俺達の船より一回り程小せえんだ。だがな、そいつは軽く30メートルを越してやがった。伝説のクラーゴンかと思うくらい、でかかったぜ。
片目が真っ赤に光ってて、もう片方の目で俺達を睨み付けるんだ。乗ってた野郎の一人が、俺の肩に手を置いてこう言った。運が悪かったな、たまたま拾われた船がこいつに出会っちまうなんて。一難去ってまた一難ってなぁ、この事を言うんだぜ。ところが、流石は俺達のお頭よ。悪魔の前でも堂々と胸を張ってな、野郎共、奴を仕留めるよ! って、そりゃあ勇ましかったぜ。あれこそ海の男の鑑(かがみ)だぜ。え?・さっきは可愛かったって言ってたのに、てか?・まあ、色んな顔を持ってるって事さ。小せえ事に拘らねえのも、海の男の条件だぜ。
・それから何分経ったろうか。ほんの一瞬とも、何時間とも思えた睨み合いの後、お頭の合図で大砲の玉が奴目がけて飛んで行った。爆音と共に炸裂した砲弾は、何でも先代のお頭がとあるじいさんに教わって造った、魔法の玉とか言う物らしい。ともかく奴の足が1本吹っ飛んだ。怒り狂った奴は、そのまま船に突進して来やがった。どかーーんってな激しい音がして、船の横っ腹に奴は取り付いたんだ。
・ところがお頭はその突進を物ともせず、伸び来る触手に剣を突き立て甲板に張り付けると、そのままぶっとい足の上を走って、奴のまともな方の目に懐のナイフをグサリ!・そこへすかさず砲弾を何発もぶち込んで、流石の海の悪魔も海中へ潜って行っちまった。そして最後に撃った砲弾が激しい水しぶきを上げ、船の上に土砂降りの雨を降らせた。俺達はその海水の雨の中、しばらくの間呆然と立ちすくんでたんだが、その沈黙が突如破られたんだ。一体何が起きたと思う?・その沈黙を破ったのが、何を隠そうこの俺様よ。……と言っても、俺の悲鳴だったんだがな。
・お、何か呆れてやがるな。何だよ、その苦笑いは。笑い事じゃねえぜ。何せ俺の頭の上に落ちて来た、あの赤い玉。奴の潰れた目にはまってた玉が、弾みで外れて飛んで来たんだが、そいつが俺の頭を直撃してよぉ。ほら、これがその時の傷跡よ。まあ、名誉の負傷ってな格好良いもんじゃねえけどな。ともあれ、俺はお頭に心底惚れ込んでな。無事海域を抜けてこの家まで辿り着いた時に、仲間に入れてくれって頼み込んだんだ。尤も、流石に二つ返事で入れてくれる程、甘くはなかったがな。
・それから俺の、辛く苦しい海賊修行の物語が幕を開ける訳だが……。何?・そこは別に聞きたく無い?・けっ、ここからが面白えのによ。まあいいか。もうじき夜が明ける。お頭が帰って来たら、また今日も荒れ狂う海に出なくちゃならねえからな。と言う訳で、俺の話はこれでおしまいだ。どうだ、何か参考になったか?・それとも、もう海にゃ出たくねえか?・はっはっはっ。まあ北の海をうろうろしなきゃ、まず大丈夫だ。安心しな。
・何だ、まだあるのか?・ああ、その時の赤い玉なら、どっかにしまっちまったよ。どこだったかは忘れちまったけどな。欲しいんなら、くれてやるから探してみな。この家のどこかにあると思うぜ。おっと、お頭のお帰りだ。お前も立派な海の男になれよ、じゃあな。