ドラゴンクエスト3
ドラゴンクエスト3小説ーネクロゴンドの悲劇
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著作者:異界探訪
Kira’sQuest徹底攻略広場
ドラゴンクエスト3
・ここは岩山に囲まれた、荘厳なるネクロゴンドの国。東のアリアハンに次ぐ、世界第二位の国力を誇る大国である。北には険しい山脈が広がり、西と南は大洋に閉ざされ、そして東に聳(そび)えるは何者をも寄せ付けぬガイアの火山。こうした地の利により、ネクロゴンド国は他国の侵略を阻んで来た。
・それは、秋も終わりに近付き、木々の葉が落ち始めた季節の事であった。折から地震が頻発し、数十年振りにガイア山が噴火するのではなかろうかと、民の不安はいや増しに募るばかりである。特にテドンの村と城下町を結ぶネクロゴンドの洞窟は酷く、そこを通ってやって来る旅人は、所々地形が変わり崩れている場所もあると報告している程である。その為国王は兵を集め調査団を組織し、洞窟及び火山の調査に向かわせようとしていた。
・そして今正に調査団が出発しようという時、これまでで最も激しい揺れがネクロゴンドの大地を襲った。それと同時に、辺りに漂う禍々しき負の気配。
「この妖気、ただ事ではないぞ。一体何が起きたというのじゃ」
・そこへ、偵察に出ていた兵士が駆け込んで来る。
「国王、大変です!」
「おお、そなたは先見(さきみ)の。して、ガイアの様子はどうであった」
「それが、ガイア山には大した変化は見られなかったのですが、事態はそれよりも深刻で御座います。……魔物共が、南の洞窟より溢れ出ております!」
「な、何じゃと!?・それはどう言う事じゃ。この妖気、魔物共が発する物じゃと言うのか」
・それまで、世界には魔物など殆ど存在していなかった。せいぜいスライム等が、旅人に悪戯(いたずら)をする程度であった。それ故鍛え抜かれた兵士と言えど、苦戦を強いられるのは目に見えていた。城下町は瞬く間に炎に包まれ、人々は魔物の爪や牙に引き裂かれてゆく。
「ぬう、わしの剣と鎧を持て!・わし自ら討って出るぞ!」
・国王は、近衛兵を引き連れ城の外に出る。そこには傷ついた兵士達の前に、既に魔物の軍勢が居並んでいた。
「魔物共よ、わしはネクロゴンドの国王である!・何故に汝等(うぬら)は我が国に攻め入るのか」
・そう声高に叫んだ国王の言葉に答えたのは、そこに居た魔物の何れでもなかった。その後ろから足音を響かせて現われたのは、乾いた褐色の肌、緑の法衣に身を包み、顔に時折赤く覗く濡れ光る爬虫類の舌持つ巨体であった。
「我が名は、魔王バラモス。たった今より、この世界は我が物となる。光栄に思うが良い、ここを我が居城として用いてやろうぞ」
「な、ふざけた事を。人間を余り嘗めてもらっては困るな。その方等の好き勝手にさせる程、甘くは無いぞ!」
「ふははははは。虚勢を張るのはその位にしておくのだな、小さき人間よ。しかしこの有り様を見てもその様な大口が叩けるのは、流石王として民の上に立つ者と誉めておこう。よかろう、その度胸に免じて、このわし自らの手で屠(ほふ)ってくれようぞ」
・その言葉を合図に、魔物共は一斉に咆哮を上げ襲いかかった。
「国王、最早これまでですぞ。奴等の強さは尋常ではありませぬ。どうか王だけでも、隣国イシスにお逃げ下さい」
・国王軍は、バラモス率いる魔王軍の猛攻に撤退を余儀なくされていた。そして謁見の間、玉座に戻った国王は最後の選択を迫られていた。強国の誇りを捨てて遁走(とんそう)するか、それとも無念の死を持って誇りを貫くか。魔王の前に降伏の道は無い。外から聞こえて来る阿鼻叫喚を耳にしながら、国王はしばし考えを巡らせる。
「国王!・考慮の余地はありませぬぞ。今にもあのバラモスめが、ここまで攻め入って来ましょう。そうなってからでは遅いのですぞ」
「解っておる。じゃがな、わしとて難攻不落のネクロゴンドの王と謳われた男。たとえ相手が魔王とて、おめおめ逃げ出したのでは他国に示しがつかぬ。それに、彼奴に無惨にも殺された民や、わしを守って命を落とした兵達に、何と詫びれば良いのじゃ」
「それは、そうで御座いますが。しかし誰かが生き延びて、この事態を一刻も早く他国に報さねばなりませぬ。それこそ、一国の主足る務めではありませぬか?」
・国王は立ち上がり、しばし宙を見つめた後兵士の肩に手を置いた。
「のう、わしに生き恥を晒せと申すか。いいや、それはならぬ。もうわしは充分に生きたでな。それに引き替え、そなたはまだ若い。生き残るなら、若いそなたの方が適任じゃ」
「国王?」
「その役目、ネクロゴンド王の名に於いてそなたに命ずる。わしに成り代わり、魔王の脅威を伝えるのじゃ。よいか、これは国王の命である。逆らう事は罷りならんぞ!」
「こ、国王……」
「さあ、急ぎ北の山脈を抜けてイシスに赴くのじゃ。この剣と鎧を持って行くがよい。魔物共の手が及んでおるやも知れぬからな」
・言うと、国王は身に付けていた剣と鎧を兵士に渡す。
「この様なお気遣い、有難き幸せであります。この任、謹んでお受け致します。この剣と鎧に刻まれし王家の紋章に誓い、必ずや!」
・最敬礼を行う兵士の頬に、熱き物が一筋光る。
「うむ、残念ながら生きて再びまみえる事はあるまい。これまでのそなたの忠義、深く感謝するぞ。さあ、もう行くのじゃ。左手の池、中央の島に地下に降りる階段が隠してある。そこから山の麓に抜けられるであろう」
・兵士は無言で頷くと、謁見の間より退出する。それを見送ると国王は、ほぅと溜め息をつき玉座に腰を下ろす。そして、それを待っていたかの様に入口にゆらりと影が差した。
「魔王バラモスとやら、遅かったではないか。待ちくたびれておった所じゃぞ」
・それから数刻の後、ネクロゴンド国は永きに渡る歴史に終止符を打たれたのであった。そして……。
「バラモス様、この様な地下通路を発見致しましたが、如何なさいますか」
「ふむ、ここから逃げ出した輩がおると見える。まあ良かろう、せいぜい我が名を世界中に広めるがよい。よし、ここに我が部屋を造るのじゃ。外からの侵入を許さぬよう、通路は潰しておくのじゃぞ。さぁて、第一段階は終了じゃ。エビルマージよ、事の次第をゾーマ様に報告せよ。そして各地に派遣する為、他の将軍共を遣わして戴くのじゃ」
「御意のままに」
「そうそう、南に小さな村があったな。目障りじゃ、あそこも早々に叩いておけ。見せしめにもなるしな」
・かくしてこの世は魔王の瘴気に包まれ、人々は魔物の影に脅える事となった。やがてそんな世の中を救わんと勇者が旅立つのだが……、それはまた、別の物語である。